動く教科書は、車だった
2026.02.25技術のヒントは、思いがけないところに転がっている
製図台の開発の中で、
振り返ってみれば、
いくつかの技術が流れを大きく変えました。
その一つが、ガスバネ(ガススプリング)の採用です。
祖父・小村清一は、
大の車好きでした。
ただ「乗るのが好き」という話ではありません。
車を買えば、
構造を観察し、
ときには分解し、
元に戻す。
そのたびに、
ディーラーに叱られたり、
呆れられたりしたことも、
一度や二度ではなかったそうです。
車は、動く教科書だった
祖父はよく、
「自動車は、その国の産業のバロメーターや」
と言っていました。
大量生産。
安全性。
操作性。
耐久性。
あらゆる技術が、
一台の車の中に詰め込まれている。
だからこそ、
車の仕組みをよく見れば、
モノづくりのヒントが
いくらでも転がっている。
ガスバネも、
そんな車から得た発想でした。
ガスバネという「答え」
ガスバネは、
昭和四十年頃から
主に自動車用として使われ始めた技術です。
ライトバンの後部ドアを支えたり、
ボンネットの開閉を助けたり。
鉄のパイプの中に
チッソガスを封入した構造で、
言ってしまえば、
水鉄砲とよく似た仕組みです。

祖父は、
この仕組みを見て思います。
「これやったら、製図台も軽く動かせる」
上下昇降。
図板の角度調整。
これまで力任せだった動きが、
ガスバネによって、
驚くほど楽になります。
早すぎた挑戦
当時、ガスバネはまだ車分野以外で転用する考え方はない時代。
国内メーカーも、
製図台用途には
ほとんど関心を示していません。
それでも祖父は、
積極的にメーカーと交渉します。
正直に言えば、
最初は、
かなり渋られたそうです。
「こんな用途で使えるわけがない」
「前例がない」
それでも、
粘り強く頼み込み、
ようやく部品を作ってもらった。
今となっては、
笑い話の一つですが、
当時は真剣そのものでした。


