Columns コラム

島根での起業

2026.02.04

戦後、祖父・小村清一は日本へ戻りました。
復員後に選んだ仕事は、カメラの修理でした。

当時、カメラは高級品です。
一般の人が気軽に持てるものではありません。

修理を依頼してくる客の多くは、
終戦後の日本に駐留していた
アメリカ軍のエライさんでした。

彼らは、アメリカ製のジープに乗って現れ、
壊れたカメラを差し出します。

祖父は、余計なことは言わず、
分解し、直し、調整する。

言葉が十分に通じなくても、
仕事の出来は、はっきり伝わりました。


技術が、人を近づける

何度も修理を重ねるうちに、
「腕のいい職人だ」
と認められるようになります。

顔なじみになり、
片言のやり取りを交わし、
次第に打ち解けていく。

そんな中で、
車好きだった祖父に、
思いがけない話が舞い込みます。

――ジープを、安く譲るがどうだ。

軍から払い下げられる車両を、
好意で回してもらったのです。

祖父は喜びました。
機械を触ることも、
車をいじることも、
純粋に好きだった。

しかし、この「好き」が、
少しずつ歯車を狂わせていきます。


好きが、仕事を押しのける

ジープに時間を使いすぎる。
修理の段取りが後回しになる。
商売としては、
うまく回らなくなっていきました。

祖父は、
「このままではいけない」
と感じます。

そして、
大きな決断をします。

島根を離れ、大阪へ出よう。